ホーム >コラム「長崎街道をゆく」>鳴瀬宿&塩田宿&北方宿へ
長崎街道

鳴瀬宿&塩田宿&北方宿へ
~レトロな町並みが残る、旧街道を歩く~

 小田宿を出ると、北方宿から塚崎宿を通り、嬉野宿を目指す本街道と塩田方面から嬉野宿へ行く塩田道に分かれます。江戸時代初期の開通時は、北方宿の手前で六角川に沿って南へ向かい、塩田川を嬉野へと行く塩田道が本道でした。しかし、塩田川の度重なる氾濫で、度々通行が不可能になり、六角川支流の武雄川沿いに北方、そして当時から温泉で賑わっていた塚崎を経由した塚崎道が作られ、こちらが本道となりました。まずは、旧街道の塩田方面へと歩いてみましょう。
西岸寺
▲西岸寺

 六角川上流の鳴瀬山の麓にあった鳴瀬宿は、水陸両方の交通の要衝で、地域の特産物の大甕や陶器などを船に乗せて積み出ししていました。六角川沿いには家や商店、問屋などが並び、家並みの裏側にある港から船が盛んに往来をしていたといいます。
 本陣は、西岸寺で、こちらは杵島山に猟に訪れる鍋島藩主の休憩所としても利用されました。藩主専用の玄関があり、鍋島の紋が刻まれているのを見ることができます。

 鳴瀬といえば、大正時代の初期から製造されている「なるせみそ・しょうゆ」が有名です。地元の米・麦・大豆で醸造された味噌・醤油にこだわる〈角味噌醤油〉は、大正初期の創業以来の伝統を守り続けています。こうじを多めに使用しているため、澱粉質が多く、発酵熟成が早く、糖化が進むのが特徴で、とても甘味のある味噌になります。 昔ながらの自然の甘味や旨味、そして香りのいい特産品として市民に親しまれています。〈角味噌醤油〉では、新たに武雄市特産品であるイノシシ肉を入れた「とっしん汁」も商品として発売しています。一度食べてみたいものです。
角味噌醤油が作る醤油
▲角味噌醤油が作る醤油
とっしん汁
▲とっしん汁
とっしんカレー
▲とっしんカレー
塩田宿の町並み
▲塩田宿の町並み

 塩田宿は、町の中央を塩田川という有明海に注ぐ川が流れ、物資の集散地である川港として、発展してきました。塩田宿は、街道の宿場町であると同時に津(港)としての顔を持っていたため、別名「塩田津」とも呼ばれていました。水上運輸はもちろんですが、街道沿いの家並みは、現在でも当時を思わせるようなレトロな佇まいを見せています。

 白壁の漆喰は保存のため修理され、まるでタイムスリップしたかのようです。塩田宿屈指の廻船問屋だった「西岡家住宅(国指定重要文化財)」や木造3階建ての大型居蔵造の町家「杉光陶器店(国指定有形登録文化財)」など、長崎街道や水上運輸で発展した跡を今も残す建物が残っています。
西岡家住宅(国指定重要文化財)
▲西岡家住宅(国指定重要文化財)
杉光陶器店(国指定有形登録文化財)
▲杉光陶器店(国指定有形登録文化財)
塩田宿レトロ館
▲塩田宿レトロ館

 そんなレトロな町並みの中でぜひ立ち寄ってもらいたのが、佐賀銀行塩田支店前にある「塩田宿レトロ館」です。
 白壁土蔵造りの3階建で、1階に酒やもろみ、お茶などの地元の特産品の展示販売、1階奥の喫茶コーナーでは、昭和の歌謡曲を聴きながらこだわりのコーヒーを楽しむことができます。2・3階には古民芸展示館になっており、三十数年かかってコレクションされた、水差しや大皿、ガラス、昭和の看板などが多数展示されています。観光客はもちろん、市民の憩いの場としても親しまれています。町歩きの休憩に立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

 さて、本街道に戻り、次は「北方宿へ」と参りましょう。

 北方宿は江戸時代、多久領の支配下にあり、領主は多久に居住、多久南自郷の総轄責任は別当に執らせ、構内に駅次馬を整えています。江戸中期には、石炭が掘り始められました。石炭は大砲の製造や外貨獲得のために重要なものだったので、街道には、旅人に混じり、石炭を山積みした人馬も行き来していました。
 東の構口の近くにある本陣(現稗田家)の建物は1839年に建てられたもので、伊能忠敬も宿泊したという歴史があります。当時の構造そのままで、貴重な文化財となっています。当初は茅葺きで、明治30年に瓦葺きに葺き替えられました。当家は商業を営み、江戸時代の炭鉱に関する文書類が今も保存されています。
 江戸時代の炭坑と六角川に浮かぶ石炭運搬船の様子は八幡神社に奉納されている絵馬に克明に描かれています。この炭坑絵馬は1997年に北方町の重要文化財に指定されています。
北方宿本陣
▲北方宿本陣
炭坑絵馬
▲炭坑絵馬
 北方宿の追分からは、西への通路は唐津街道、平戸に通じる伊万里街道となります。左へ曲がると、長崎街道の本道の次の宿・柄崎宿へと向かいます。水運の要衝として栄えた塩田道の繁栄と、柄崎道の誕生の歴史を思い浮かべながら、この3宿を歩いてみると、長崎街道の秘めた魅力にもっと気がつくことができるかもしれませんね。

 次は柄崎宿へ参ります。


長崎街道を歩こう!

【鳴瀬宿】
○江戸時代の国名/肥前国
○現在地/佐賀県武雄市橘町大字芦原
○アクセス/
  電車…JR佐世保線高橋駅から徒歩約15分
     JR長崎本線肥前鹿島駅から車で約30分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で5分

【塩田宿】
○江戸時代の国名/肥前国
○現在地/佐賀県嬉野市塩田町
○まつり/お山さん祭り(4月)、塩田夏まつり(8月)、丹生神社くんち(11月)、八天神社お火たき(12月)

【北方宿】
○江戸時代の国名/肥前国
○現在地/佐賀県武雄市北方町
○アクセス/
  電車…JR佐世保線高橋駅から徒歩約30分
     JR長崎本線肥前鹿島駅から車で約40分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で10分
○まつり/高野寺シャクナゲまつり (4月)、四季の丘フェスタinきたがた(4月)、大聖寺あじさいまつり(6月)、お不動さんまつり〔大蛇の歯公開〕(8月)、志久七囃子浮立奉納(10月)、祖子分面浮立(10月)、お不動さんまつり〔火渡り行〕(2月)

【西岸寺】
○所在/佐賀県武雄市橘町大字芦原4783
○アクセス/
  電車…JR佐世保線高橋駅から徒歩で約15分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で5分

【角味噌醤油】
○所在/佐賀県武雄市橘町大字芦原4706
○問い合わせ/0954-23-2819
○URL/http://www.sumimiso.jp/
○アクセス/
  電車…JR佐世保線高橋駅から徒歩で約15分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で5分

【西岡家住宅】
○所在/嬉野市塩田町大字馬場下甲720

【杉光陶器店】
○所在/嬉野市塩田町大字馬場下甲728

【塩田宿レトロ館】
○所在/佐賀県嬉野市塩田町馬場下甲1456-3
○営業時間/10:00~18:00 ○休館/水・木曜
○アクセス(西岡家住宅、杉光陶器店、 塩田宿レトロ館 )/
  電車…JR長崎本線肥前鹿島駅から車で約10分
     JR佐世保線武雄駅から車で約15分
  車…長崎自動車道武雄ICから車で15分

【北方宿本陣】
○所在/佐賀県武雄市北方町
○アクセス/
  電車…JR佐世保線北方駅から徒歩で約20分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で10分

【参考文献】
『長崎街道を行く』 著/松尾卓次 発行/葦書房
『長崎街道-肥前佐賀路2』 発行/図書出版のぶ工房
武雄市HP (http://www.city.takeo.lg.jp/
嬉野市HP (http://www.city.ureshino.lg.jp/
国土交通省 九州地方整備局佐賀国道事務所HP (http://www.qsr.mlit.go.jp/

【写真&資料】
武雄市営業部観光課
嬉野市教育委員会
塩田宿レトロ館

【協力】
藤津ケーブルビジョン