長崎街道

塚崎宿へ
~温泉と蘭学で賑わう宿場町~

 佐賀を代表する温泉のひとつとして有名な「武雄温泉」。透明で柔らかな湯ざわりの武雄温泉は、730年頃に書かれた『肥前風土記』で、「群の西の方に温泉の出る巌(いわや)がある」と紹介されているほど古くから知られていました。神功皇后に始まり、伊達政宗やシーボルト、伊能忠敬、吉田松陰などがこちらを訪れたと言われています。
 江戸時代、この場所は長崎街道塚崎宿として栄えました。当時はまだ「武雄」という地名もよりも「塚崎」が一般的でした。大昔、この地方は、海が迫る入り江だったと考えられ、また至る所に古墳が散在していたそうです。このことから、「墓のある海岸」の意味で「塚崎」と言われるようなったそうです。「武雄」の名が一般的になるのは、明治28年、九州鉄道が開通した時、駅名を塚崎とせず、武雄にしてからになります。
武雄温泉の楼門
▲武雄温泉の楼門

 武雄温泉の温泉場入り口には竜宮城のような門があります。「楼門」と呼ばれるこの門は、武雄温泉のシンボルとして親しまれています。この楼門が完成したのは、大正4年。東京駅なども設計した辰野金吾博士の設計によるものです。この辺りは以前より、たくさんの旅籠や茶屋が軒を並べる賑やかな場所で、塚崎宿の本陣もこちらを入ったところにありました。

貸切風呂殿様湯
▲貸切風呂殿様湯

 佐賀藩が運営し、武雄領主が管理する湯屋もあり、湯壷は大名から庶民まで身分ごとに区別されていたそうです。江戸中期に領主の専用風呂として作られた殿様風呂は、明治期に白と黒の大理石の市松模様になりましたが、今でも現存しています。
 脇本陣は楼門の前の平戸屋(現湯元荘東洋館)に置かれ、宮本武蔵が巌流島の決闘の後、滞在したと言われています。武蔵はここで「五輪書」の構想を練ったそうです。ロビーの一角には武蔵が使ったとされる井戸も残されています。

 早くから温泉地として利用されていた塚崎宿ですが、長崎街道の宿場になったのは、十八世紀中頃、かつて本道であった塩田道が塩田川の度重なる氾濫により、度々通行が不可能になるということがあり、塚崎宿が宿の一つとして数えられるようになりました。歩き疲れた旅人は、温泉に入り、長い旅の疲れを癒したのではないでしょうか。

武雄市歴史史料館 蘭学館
▲武雄市歴史史料館 蘭学館

 武雄の鍋島家は、28代茂義、29代茂昌の時代に積極的に蘭学を導入しています。1642年からは、西洋への唯一の窓口であった長崎の警備に当たっていました。
 1808年、イギリスの軍艦フェートン号が、オランダの国旗を掲げて長崎に入港し、出迎えのオランダ商館員二名を捕らえ、水や食料を強要したという事件が起きました(フェートン号事件)。この事件は、当時の幕府や各藩に衝撃を与え、海防政策・軍備強化を促すことになりました。警備に当たった佐賀藩も屈辱を味わい、これが武雄が蘭学に関心を深める契機となったと言われています。

青銅製大砲
 
大砲
▲大砲
地球儀と天球儀
▲地球儀と天球儀  

 火打ち銃や大砲、牛痘の実施、ガラスの製作、火術・火薬の研究、蒸気船の製造など、様々な仕事に取り組んだ佐賀藩の歴史は、武雄市歴史史料館の蘭学館で見ることができます。蘭学館では天球儀・地球儀、天体望遠鏡など、数多くの西洋文物が展示されています。このことからも、塚崎宿は長崎街道を通して、長崎から西洋の風が吹いていたことが伺える宿場町であることが感じとれます。

 木屋瀬から小舟に乗って遠賀川を渡り、植木へ往来していた渡し舟は、中島橋の南の土手から舟がでていました。小舟に乗って川向こうの植木の町へとさらに続く長崎街道。もう少し寒くなると、目印の大きな銀杏が黄色に染まってくることでしょう。

 塚崎宿を歩き、歴史に触れたところで思うのは、「今も昔も旅人は温泉に浸かり、旅の疲れを取っていた。」ということ。私も、ゆっくりと温泉で散策の疲れをとることにしましょう。

 次は嬉野宿へ参ります。


長崎街道を歩こう!

【塚崎宿】
○江戸時代の国名/肥前国
○現在地/佐賀県武雄市武雄町
○アクセス/
  電車…JR佐世保線武雄温泉駅から徒歩約15分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で約15分
○まつり/武雄温泉春まつり (4月)、保養村ほたる祭り(5~6月)、灯篭まつり・夏おどり(8月)、名月バンコまつり(9月)、武雄温泉秋まつり(10月)、湯のまち武雄の物産まつり(11月)、民陶火祭り(11月)、人形祭り(2~3月)

【楼門】
○所在/佐賀県武雄市武雄町温泉通り
○アクセス/
  電車…JR佐世保線武雄温泉駅から徒歩約15分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で約15分

【殿様湯ほか大衆浴場】
○所在/佐賀県武雄市武雄町武雄7425
○入浴料/元湯400円、蓬莱湯400円、鷲ノ湯600円、家老湯3,000円(平日2,500円)、殿様湯3,800円(平日3,300円)
○アクセス/
  電車…JR佐世保線武雄温泉駅から徒歩約15分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で約10分

【宮本武蔵の井戸】
○所在/佐賀県武雄市武雄町温泉通り
○アクセス/
  電車…JR佐世保線武雄温泉駅から徒歩約15分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で約10分

【武雄市歴史史料館】
○所在/佐賀県武雄市武雄町大字武雄5304-1
○アクセス/
  電車…JR佐世保線武雄温泉駅から徒歩約15分
  車…長崎自動車道武雄北方ICから車で約10分

【参考文献】
『長崎街道を行く』 著/松尾卓次 発行/葦書房
『長崎街道-肥前佐賀路2』 発行/図書出版のぶ工房
武雄市HP (http://www.city.takeo.lg.jp/
国土交通省 九州地方整備局佐賀国道事務所HP (http://www.qsr.mlit.go.jp/

【写真&資料提供】
武雄市営業部観光課

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