長崎街道

長崎 ~終点でもあり始まりでもある天領・長崎~

 「長崎」の入口部分は「蛍茶屋」と言われています。
「史跡 一の瀬口 蛍茶屋跡」
▲「史跡 一の瀬口 蛍茶屋跡」


 蛍茶屋電停近くに、「蛍茶屋跡」がありました。

 蛍の名所だったころから「蛍茶屋」と言われていたそうです。
現在、茶屋はありませんが、茶屋があった頃は、そこから夜空に無数の蛍が舞う姿を眺めていたのでしょうか…。

そんなことも思いながら歩いていると、一の瀬橋にさしかかります。

一の瀬橋
▲一の瀬橋


 この橋は1653年に架けられ、一度も崩壊したことがないといいます。

 「昔は、この付近は樹林が茂り、夏は螢の名所であり、料亭があったので、いつのころからか螢茶屋と呼ばれた。長崎を旅立つ人と、見送りの人たちとが別れを惜しんで酒を酌み交わしたのも、この地であるが、当時をしのぶ遺構は、今では、この一の瀬橋と付近の街道の一部だけとなっている」と書かれてあります。

 たくさんの人が行きかった場所。 たくさんの人と人を繋いだ場所。
勝海舟も、坂本龍馬も、ここで別れを惜しんだのでしょうか…。
きっと、数え切れないほどの、ドラマが生まれたことでしょう。
そうして結びついた強い絆が、橋をも崩壊させず、今に残っているのでしょうね。
松島稲荷神社の参道にて
▲松島稲荷神社の参道にて


 また、近くには〈宿とアンティークきもの 長崎かゞみや〉というお店があります。
宿でゆるりと旅の疲れを癒すもよし、着物を着て長崎街道を歩くのもまた風情があっていいかも知れませんね。

新大工商店街
▲新大工商店街


 ここは新大工商店街。

これまでの山超えとは裏腹に、なんとも賑わう街中へと入っていきます。
シーボルトが普段から歩いていたであろうこの道。
そんな道は、いつしか「シーボルト通り」と名付けられ、今も多くの人々に親しまれています。

 そんなシーボルトが鳴滝塾を開いたシーボルト宅跡へ寄り道をすることにしましょう。
シーボルト宅跡
▲シーボルト宅跡
シーボルトの胸像
▲シーボルトの胸像

 緑の囀りが聞こえる、静寂な地に、シーボルトの宅跡はあります。
シーボルトがオランダ商館の医師として来日したのは文政六(1823)年のこと。彼の卓越した医術はたちまち長崎中で評判を集めていました。翌年、塾を開き、数十人の門人に医学・博物学を教授して蘭学発展に大きく貢献しました。その中には、高野長英や二宮敬作の姿もあったそうです。最先端の医学の講義が行われた場所…、まさに、日本の西洋近代医学始まりはここ「鳴滝塾」にあるといえますね!また、6月ごろになると、こちらにはシーボルトが愛したアジサイの花が咲き誇ります。

 そして、シーボルト宅跡奥にひっそりと佇む赤いレンガ造り風の建物には、シーボルトに関する数々の資料や愛用品などを展示しています。
シーボルト記念館
シーボルト記念館
▲シーボルト記念館

 ロビーでは、映像でシーボルトの生涯を簡単に紹介。2階フロアーでは、シーボルトの生涯を6つのコーナーに分け展示を構成しています。吹き抜けの壁面では、シーボルト家の紋章をレリーフとステンドグラスで表現しています。また、3階の企画展示室では、年に数回の企画・特別展を開催しています。

諏訪神社
▲諏訪神社


 シーボルト通りに別れを告げ、続いては秋の大祭・長崎くんちの舞台である諏訪神社へ…。

長崎人たちにとっては、どうってことのない階段は、県外の人からすれば、大抵舌を巻かれます。
一歩一歩階段をかみ締めのぼっていると、どこからかモッテコーイ!モッテコーイ!と聞こえてくるかのようです。

「お諏訪のぼた餅」470円
▲「お諏訪のぼた餅」470円


 諏訪神社のすぐ隣長崎公園の中にある〈月見茶屋〉。

明治18年創業当時から変わらぬ味が、心をほっと和ませてくれます。
ひとつ一つ手作りで丁寧につくられるぼた餅は程よい甘さの餡で、しっとりとした舌触り。
参拝ついでにぜひ立ち寄りたいお店です。

長崎県庁
▲長崎県庁


 ここは長崎県庁。

ここは、かつての長崎奉行所の跡地だったそうです。

 県庁の敷地内には「イエズス会本部」「奉行所西役所」「海軍伝習所」の跡地の石碑があります。
県庁入り口付近にある石碑
▲県庁入り口付近にある石碑
長崎奉行所西役所の全景
▲長崎奉行所西役所の全景

 石碑近くに書かれてある長崎奉行所西役所の全景をご覧ください。奉行所の先には出島が見えていますね。
現在は、この地から出島を見ることはできませんが、また出島と長崎街道も深い関係があるのです。
江戸時代唯一の外国への窓口であった長崎の出島。南蛮貿易での貴重な輸入品であった「砂糖」は、この長崎街道を通って江戸に運ばれたのです。
同時に南蛮菓子も伝わり、今ではシュガーロードとも呼ばれています。

 長崎街道は多くの志士たちと新たな世界を結ぶ夢の架け橋。
開国、明治維新へとつながる日本を、この街道なしでは語れないでしょう。

 様々な文化が行き交った道、それが長崎街道です。
この長崎街道を通じて、もの、技術、文化が海外から日本へ、日本から海外へと伝わっていったのです。

 小倉から長崎に至る25宿、57里(228キロ)の道のり。この距離を歩くのに私は2年ちょっとかかってしまいましたが、当時の人はこの距離を約1週間で歩いたといいます。現在は親切な案内板や説明板などがたくさんあり、歩きやすく、楽しい道中ですが、当時なんて足元はぞうり…雨が降れば足元も悪く、右も左も迷うほどだったと思います。しかしそんな江戸時代にこの街道を通った人たちの抱いた思いに触れ、今に歴史を残そうと努力する街の人たちの想いに寄り添いながら歩く道中は、何ものにもかえがたいものでした。2007年より出発したたび、無事にゴールを迎えることができました。

 今よりずっと前の話のようで、シーボルトや龍馬、海舟が歩いたことでさえも、昨日のことのように思えてくる…。
みなさんも街道を歩き、歴史の本や教科書では感じることのできない、本人たちの思いをぜひとも感じてほしいものです。

 2007年より、長い間ご愛読ありがとうございました。


長崎街道を歩こう!

【長崎】
○江戸時代の国名/長崎
○現在地/長崎市

【蛍茶屋跡】
○所在/長崎市矢の平1丁目付近
○アクセス/
 電車…長崎電気軌道「蛍茶屋」電停より徒歩3分
 車…長崎自動車道長崎芒塚ICより車で8分

【一の瀬橋】
○所在/長崎市矢の平1丁目付近
○アクセス/
 電車…長崎電気軌道「蛍茶屋」電停より徒歩3分
 車…長崎自動車道長崎芒塚ICより車で8分

【宿とアンティークきもの 長崎かゞみや】
○所在/長崎市本河内1-12-9
○URL/http://n-kagamiya.com/
○アクセス/
 電車…長崎電気軌道「蛍茶屋」電停より徒歩3分
 車…長崎自動車道長崎芒塚ICより車で5分。近隣駐車場へ駐車し徒歩3分

【シーボルト記念館】
○所在/長崎市鳴滝2-7-40
○URL/http://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/siebold/
○開館時間/9:00~17:00(入館は16:30まで)
○入館料/一般100円 小中学生50円 (※団体割引あり)
○駐車場/あり
○アクセス/
 電車…長崎電気軌道「新中川町」電停より徒歩7分
 車…長崎自動車道長崎芒塚ICより車で7分

【諏訪神社】
○所在/長崎市上西山町18-15
○URL/http://www.osuwasan.jp/
○アクセス/
 電車…長崎電気軌道「諏訪神社前」電停で下車。地下道で神社の参道へ出ます。
 車…長崎自動車道長崎芒塚・出島ICより車で10分

【月見茶屋】
○所在/長崎市上西山町19-1
○営業時間/10:00~16:00(平日) 9:00~17:00(土・日・祝)
○定休日/水曜日(祝日の場合は翌日休。水曜が1日、15日の場合は営業、翌日休)
○駐車場/あり(諏訪神社内)
○アクセス/諏訪神社拝殿左隣

【長崎県庁】
○所在/長崎市江戸町2-13
○アクセス/
 電車…JR長崎駅より徒歩10分
 車…「長崎出島道路」より車で3分

【参考文献】
『歩く人のための長崎街道【長崎~多良見~諫早、長崎~時津】編』 発行/長崎県教育庁学芸文化課
『長崎街道を行く』 著/松尾卓次 発行/葦書房
『長崎“街道周辺の史跡”』 著/岩永弘

【写真&資料提供】
長崎市文化観光部文化財課
シーボルト記念館
諏訪神社
ながさきプレス

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