長崎街道

矢上宿 ~昔の面影を探して~

 緑のトンネルをぬければ、海があり、川が流れ、のどかな風景が広がり…。非常にのんびりとした旅を送ることできた「多良街道」を去り、再び長崎街道へ戻って参りました。ここは長崎の東の玄関口。長崎街道と島原街道の合流点であり、旧矢上村は佐賀鍋島藩の家老諌早氏の知行地で長崎代官支配地と境界を接していたところです。
それが「矢上番所」です。
矢上番所橋
▲矢上番所橋
矢上番所跡
▲矢上番所跡
 矢上番所は長崎街道の重要な地点であり、役人が通行人を監視し、警備にあたった場所だそうです。現在は、コンクリート造りですが、1838年には石造りでおよそ2mほどの眼鏡橋が架けられていたそうです。説明板には、『頭役以下の役人が警備しており、長崎に向かう武士、留学生、商人など旅人の往来を厳重に監視したと記されてました。
諫早領役屋敷跡
▲諫早領役屋敷跡

 「矢上番所」から卸団地方面へ数分歩くと、「諫早領役屋敷跡」につきます。
木塀に囲まれた趣のある古い民家です。

 説明板によると、ここは長崎開港によって、近隣の佐賀藩主、諫早領主、肥後藩主との間で、報告事項や紛争、願書の処理が頻繁に生じたため、その執務にあたるために設けられたとのこと。江戸時代には武家屋敷風の城のような塀を作っていましたが、水害により当時の塀は一部しか残っていないそうです。注目すべきは、この石垣。「亀の子くずし」という加工せずに積み上げて作る高度な技、諫早石工の技術が見られます。
本陣跡
▲本陣跡

 また、街道から少し離れてはいますが、かつて江戸時代、大名や幕府関係者が宿泊したり、休憩したという「本陣跡」(現在の長崎自動車学校)があります。

 長崎街道に戻り、しばらく歩くと左手に「矢上八幡神社」があります。
神社の石段の上には、大楠が2本あり、南側は最高幹囲5.3、北側は10.15mもあるそうです!そんな大楠は、今の長崎街道を歩く人たちをあたたかく見守り続けている存在でもあるのでしょう。市指定天然記念物にも指定されている立派なクスです。
矢上八幡神社
▲矢上八幡神社
「矢上八幡神社」にある大楠
▲「矢上八幡神社」にある大楠
 さらにその先、長崎市内では、一番古い神社とも言われている「矢上神社」につきます。大きな石の鳥居が3つ、その奥に狛犬たちが迎えてくれます。古くは大王社と称された厄除災難除の神様として名高いそうです。また、神仏習合の神社で、神社の天井絵には幕末からの書画があり、神池の中の島にある四面佛塔をはじめ地蔵尊や馬頭観音があります。
矢上神社
▲矢上神社
天井絵
▲天井絵
矢上宿跡
▲矢上宿跡
 矢上宿跡でもある、矢上神社。ここには江戸時代、番所役人がおり、村の中心地として栄えていました。また、矢上神社では節分の日に「節分祭」もあります。境内には毎年たくさんの老若男女の沢山の参拝者が 豆まきや厄払いにやってきます。
教宗寺
▲教宗寺

 では、矢上神社を経て、いよいよ教宗寺へ…。

このお寺は、勝海舟やシーボルト、坂本竜馬たちが昼食をとったことでも有名です。シーボルトも、庭園のうつくしさにうっとりし、ゆったりと旅の疲れを癒したことでしょう。シーボルトは、行きも帰りも矢上宿での旅を愉しんでいたといいます。ヨーロッパ風の食卓や椅子など、出島にいるようなくつろぎの空間、町の人たちの謙虚な態度に関心したと日記に記されていました。

 街道ちかくで腹ごしらえするなら、ここ餃子専門店〈満天〉にて。長崎の銅座ではおなじみの一口餃子専門店で30年修行を積んだ店主が、営んでいます。おすすめは「餃子定職」600円(夜は800円)。一口餃子14個、とろ~り卵のニラトジ、ごはん、味噌汁、漬物、冷奴がついて、ボリューム満点!餃子は持ち帰りもできます(400円/12個)。皮から手作りで、もっちり、ジューシーな餃子。一口サイズのなのでついパクパクと箸がすすみます。夜はお酒も充実していますよ!
〈満天〉
▲〈満天〉
〈満天〉の餃子定食
▲〈満天〉の餃子定食
 そして、旅のおみやげにおすすめなのが、〈エトワール〉の「矢上宿銘菓つぶつぶ蜜柑ちゃん」。
〈エトワール〉
▲〈エトワール〉
つぶつぶ蜜柑ちゃん(120円/1個 1,300円/1箱10個入り)
▲つぶつぶ蜜柑ちゃん
(120円/1個 1,300円/1箱10個入り)
 近くの農園で採れるみかんを使ったお菓子。中でも、摘果みかん(未熟期みかん)を有効活用し開発されたスイーツです。フレッシュなみかんの果肉をアーモンド生地で包み、さらにふんわりやわからいまんじゅうの生地で包んだ逸品。みかんの酸味とあんの甘さがほどよく、口いっぱいに幸せが広がります。長崎みかんは200年以上の歴史があります。きっと当時の旅人たちも、みかんを手にし、ひとときの幸せを味わっていたに違いありません。店内にはちょっとした喫茶スペースもあるので、甘いものとコーヒーをいただきながら、ゆっくり腰を休めてはいかがですか?
 偉大な先人・福沢諭吉、勝海舟が…、そして、あのシーボルトが…。江戸参府のために通った長崎街道・矢上宿。彼らがどんな想いを馳せながらこの街道を歩いたのか考えて歩いていました。自らの足で歩き、自らで学び、夢を持ちながら…。
長崎街道は、簡単に言ってしまえば江戸と長崎をつなぐものですが、決してそれだけのものではないということ。街道というものの中にはそこを歩いた人の思いや楽しさがあって、またひとり、またひとりと通っていくうちに街道の上にはたくさんの人々の様々な気持ちが積み重なっていき「思いの綱」になっていったのではないだろうか。何だか私も歴史上の人物になったような気がしました。

 次は日見宿から日見峠を歩きます。


長崎街道を歩こう!

【矢上宿】
○江戸時代の国名/肥前国佐賀藩諫早領
○現在地/矢上町
○矢上地区の主なまつり
 矢上くんち(矢上町コッコデショ、矢山平野浮立など)(10月)、節分祭(3月)

【矢上番所】
○所在/長崎市矢上町5-1
○アクセス/
 バス…長崎県営バス「番所橋バス停」から徒歩1分
 車…国道34号線「番所橋」交差点左折すぐ

【諫早領役屋敷跡】
○所在/長崎市矢上町76
○アクセス/
 バス…長崎県営バス「矢上バス停」から徒歩2分
 車…国道34号線「中尾入口」交差点左折すぐ

【本陣跡】
○所在/長崎市矢上町7-11
○アクセス/
 バス…長崎県営バス「矢上バス停」から徒歩3分
 車…国道34号線「中尾入口」交差点すぐ

【満天】
○所在/長崎市矢上町247-6
○営業時間/11:30~14:00/16:00~23:30
○定休日/月曜・第2日曜休
○駐車場/あり(2台)
○アクセス/
 バス…長崎県営バス「矢上バス停」から徒歩1分
 車…国道34号線沿い「小林酒店」から右折すぐ

【エトワール】
○所在/長崎市矢上町24-22
○営業時間/10:00~20:00
○定休日/不定休
○駐車場/あり(2台)
○URL/http://www.cake-etoile.com/
○アクセス/
 バス…長崎県営バス「矢上バス停」から徒歩2分
 車…国道34号線沿い「矢上バス停」から左折、矢上神社前を右折

【参考文献】
『江戸参府紀行』 著/シーボルト 翻訳/斎藤 信 発行/東洋文庫

【写真&資料提供】
エトワール
長崎市文化観光部文化財課
ながさきプレス

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